第11章 職場体験
午後――。
エッジショットの車の助手席に座ったは、流れる車窓の景色をぼんやりと眺めていた。
街の喧騒が次第に遠ざかり、ビル群は低くなり、郊外の建物が目立ち始める。
運転席のエッジショットは、相変わらず無駄のない動きでハンドルを握っている。
エ「……今日は、合同で動くヒーローの事務所に顔を出す。報告もあるし、ついでに巡回する」
低く落ち着いた声に、は軽く頷いた。
「はい」
それだけの短いやり取り。
エッジショットは特に続けることもなく、静かに前を向いて運転を続ける。
車内に、心地よい静けさが流れた。
――そのとき。
道路脇に立つ青い案内標識が目に入った。
【保須市 3km】
「……!」
一瞬、心臓が跳ねた。
(……保須。ここ、保須の近くなんだ)
前に相澤から聞かされた“ヒーロー殺し”のこと。
そして、飯田の兄のこと。
胸の奥に、冷たい何かが落ちる感覚。
その時。
エ「……余所見するな」
静かに放たれた一言に、ははっと我に返る。
「す、すみません」
エ「今は、俺と同じ視線で街を見ろ。それが“現場を見る”ってことだ」
その言葉に、は深く息を吸った。
「……はい」
エッジショットはそれ以上何も言わず、前を向いたまま運転を続けた。
(……考えすぎ…かな)
けれど、その胸の奥で、
何かが静かにざわめいているのを、は確かに感じていた。