第10章 名前をつけてみよう
が不思議に思い振り返ると、後ろの席の常闇が電子辞書を差し出してきていた。
常「校内でスマートフォンを使うことは禁止されている。これなら、紙の辞書で探すより楽だろう」
「あ、ありがとう…」
はそう言って常闇から電子辞書を受け取ったものの、使い方が全く分からない。
少し動きを止めた後、はもう一度振り返った。
「あ、あの、常闇くん…」
常「どうした」
「そ、その…私、使い方が全く分からなくて…教えてもらってもいい…かな…?」
すると常闇は一瞬目を丸くしたものの、すぐいつもの様子に戻り、に丁寧に教えた。
常「……ここを押す。そしたらここにローマ字で探したいことを打ち込めば、該当するものが出てくる」
「なるほど…」
とは言ったもののはローマ字すら分からないのだ。
一瞬また動きが止まってしまった。
すると常闇はその様子を見てフッと笑った。
常闇の笑いで、は我に返り、電子辞書を受け取った。
「あ、ありがとう!やってみるね!」
しかし常闇は電子辞書をそのまま渡さず、自分の方に置いた。
常「何を調べたい?俺が打つから、探したい言葉を言ってみろ」
「え、あ、ありがとう……」
(ローマ字分からないって、常闇くんは分かったんだ…こんなのも分からないのかって思われただろうな…)
常(体育祭の時、閉じ込められていたと言っていた。ろくに学校も行けなかったんだろう)
常「お前の過去は複雑だ。こんなの分からなくて当然。俺の配慮が足らなかった。悪かったな」
「いや、そんな、常闇くんが謝ることじゃ…私こそわからなくてごめん…」
常「別にお前も謝ることじゃない。分からないならこれから分かればいい。今はとりあえず俺が打つ。言ってみろ」
「常闇くん…」
常「安心しろ。言いふらしたりしない」
「ありがとう…じゃあ…お願いします」