第9章 雄英体育祭
保健室での帰り支度を終えたは、ゆっくりと寮へ向かって歩いていた。
(やっぱ神経系酷使しちゃうと結構キツイかも…)
その途中。
相「……おい、繋原」
静かにかけられた声に、が振り向くと、相澤がそこに立っていた。
「……相澤先生」
相「少し付き合え」
相澤はそれだけ言うと、歩き出した。も黙って後をついていく。
──寮へ向かう途中の並木道。
人目もなく、落ち着いた静けさが漂っていた。
相「……よくやったな」
相澤は、ふと前を向いたまま口を開いた。
「え…?」
相「よくやったよ。お前は。いや緑谷もか」
は黙って相澤の横顔を見つめた。
相「俺は、お前の過去を、なんとなく察してた。でも、あえて聞かなかった。俺からは聞くべきじゃないと思ってた」
は黙って、歩調を合わせていた。
心なしか、相澤もゆっくり歩いてくれている気がした。
相「……だけど、今日。体育祭で、お前の口から聞いた時“やっぱり”と思った。だけど、同時に――」
その視線が、初めてに向いた。
相「よく……あの環境で、ここまで来たな」
の胸が、ぎゅっとなった。
相「その理由は、お前の個性でも、技術でもない。……“心”の強さだ」
その言葉は、穏やかに、けれど力強くの心に届いた。
相「お前がここに立ってるのは、ここまで来れたのは、誰のおかげでもない。自分の力だ。…今までよく頑張った。偉いな」
そう言って相澤はの頭に手を置くと、優しい手つきで少し撫でた。
体育祭での戦いだけではない。
が1人孤独に耐え忍び、戦った。
今までの時間全てに、そう言ってくれているのだと、には分かった。
「先生…」
相「今日分かっただろうが、今一度言う。お前はもう独りじゃない。共に戦い、成長していく仲間がいる」
の目にはじわりと涙が浮かんだ。
相「これからも、励めよ」
「…はい」
しばらく2人の間に、静かに風が吹いた。
──そして。