第9章 雄英体育祭
切「ほら、連れてきたぜー!」
上「おーい、来たぞー!」
少し経つと、談笑していた部屋に、切島と上鳴に肩を貸されるようにしてデクがやってきた。
指には包帯、腕には内出血の痕――ボロボロだった。
(……本気で、ぶつかってくれたんだね)
デクの姿を見て、はふっと微笑んだ。
そしてまっすぐにデクを見て言う。
「……怒ってくれて、ありがとう」
その言葉に、デクは目を丸くしたが、すぐにふわっと表情を緩めた。
緑「ううん、こっちこそ……全部ぶつけてくれて、ありがとう」
ほんの数秒、静かに見つめ合ったあと――
「……次、轟くんと試合なんでしょ?」
緑「うん……」
はそっと手を伸ばした。
「治すから、貸して。緑谷くんの腕と指、今のままじゃまともに戦えないよ」
緑「……でも、繋原さんだって、怪我してるのに……!」
「轟くんは、ハンデを負いながら戦って勝てる相手じゃない。……それに…」
一瞬の沈黙が流れる。
「それに…私にしてくれたように、轟くんのことも救ってあげてほしい。だから全力でぶつかれるよう、治させて」
緑「……!」
しばらく悩んだように目を伏せたデクだったが――
緑「……わかった。お願い、します」
はそっとデクの腕に手を当てた。
淡い光が、彼の腕を包む。
上「……すっげ……」
切「これが……」
蛙「……繋原ちゃんの、個性……」
みんなが静かに見守る中、は最後にデクに微笑んだ。
「……はい、これで、もう大丈夫」
デクは驚いたように指を握った。
痛みが、消えている。
緑「……ありがとう。絶対に、勝つよ」
「……うん。頑張って」
──そして。
緑(これが、僕のやるべきことだ。僕が、僕自身の意思で、戦う。絶対に、勝つ──!)
(……行ってらっしゃい。緑谷くん。私が、ここまで来れたのは――君のおかげだから)
2人は、互いに小さく頷き合った。
その目に、もう迷いはなかった。