第6章 首輪
「主人の命令だ。」
「……………、は、はい。」
目が逸らせず、頷くと
満足そうに家主が笑う。
鎖を緩められて、ふう、と息が戻る。
殴られるかと思った…。
「ま、その腕治るまでは
この部屋にいてもらうけど。」
家主が首輪を撫でて、舌なめずりをしている。
じゃあ、数ヶ月は…ここに居候?
「……お、お客様…。」
「もう客じゃねぇぞ。」
僕がそう呟くと家主の目の色が変わる。
怒らせてしまっただろうか。
目を逸らせずに家主を見上げると、
ぎざぎざの八重歯が見えた。
「キバナさまだ。」
「き…きばな、さま。」
「そうだ。お前の主人のキバナさまだ。
忘れんなよ。」
「………は、はい。キバナさま。」
僕が服従の意を示すと、
家主…キバナさまが上機嫌になっていく。
そう呼ばれるのが嬉しいらしい。
「レイ。来い。」
同時に、僕の呼び名も変わる。
昔無理矢理言わされた本名、覚えていたのか。
キバナさまが部屋の電気を消した。
真っ暗な部屋の中で、
キバナさまがカーテンを開ける。
「……キバナさま?」
「オレさまは優しいから、
この家のルールを色々教えてやるよ。」
ばさ、と窓から月が差し込んで、
キバナさまを照らした。
「月が出てるな。……ふん。
お前からは主人の顔が見やすくていいだろ。」
「……、は、い。」
鎖を引っ張られて、首輪がぎちぎち鳴る。
窓に身体を押し付けられて、
キバナさまがにやりと笑った。
「いいか。
今から言うこと、全部覚えてもらうぜ。」
「……はい。」
「じゃあ、まず1つ目。
オレさまの命令には逆らうな。
次、2つ目…」