第1章 買う
「ここにかければいつでも来れるってことか」
「いつでも、というわけではありません。
固定のお客様がいますので、
難しい時間帯もございます。」
「は?なんだそりゃ。」
「申し訳ございません。
…このお時間でしたら、
空いておりますので。」
時計を見ると、すでに日付が過ぎている。
今日はいいが、
いつもこの時間だと呼びにくい。
「その…22:00頃からでも大丈夫です。」
少年が付け足すように言った。
どうにかしてオレさまを引き止めたいらしい。
「機会があったらな。」
「よろしくお願いします。」
ぺこり、と少年がお辞儀して立ち上がる。
札をいくらか渡すと、
少年が料金を計算した後
こくりと頷いた。
「ちょうどいただきます。」
「受け取ったらさっさと帰れ。」
「失礼します。」
最後にオレさまにもう一度頭を下げて
少年は去っていく。
奴隷が物置から出てきて、
少年を見送っていた。
名刺に書かれた携帯番号を見る。
「ま、一応な。」
スマホを取り出し、
電話帳の登録画面を開いた。