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ラストラインを越えて

第26章 号外


目黒記念の翌日。日曜日の夕方。
今日も雨が降っている。
台風2号の影響か、昨日よりも強めだった。
キトウホマレはトレーニング用の運動靴を新調するため、神座と外出していた。
『いいの買えたね。明日から履くの楽しみ』
ウマ娘向けのスポーツ用品店から出て、傘を差しながらホマレが言う。
紙袋の中にある靴の入った箱を覗き込んで嬉しそうに笑った。
『天気悪いし早く帰ろっか。それともどっかで雨宿りする?』
「帰りましょう」
即答し、真っ黒な長傘を開いて神座は駅の方向に向かって歩いていく。
『ちぇっ。じゃあ、ゆっくり帰ろっか』
少し残念がりながら、ホマレは神座について行った。
最寄駅に着くと、帰宅ラッシュの人混みになか何人かが声を上げながら何かを配っているのが見えた。
「号外でーす!号外でーす!」
新聞記事のようなビラを人々に配布している。
『そういや今日ダービーだったっけ。それ関係かな?』
「おそらくそうでしょうね」
神座が通りすがりに一枚受け取り、ホマレに渡した。
見覚えのある生徒の画像と、大きな文字が印刷されている。
『トレーナー見て、二冠達成だって……!』
「オルフェーヴルですか。皐月賞に続き日本優駿も制覇……」
神座は小さく頷き、視線を号外の紙面に落とした。
まだ雨の残るホマレの手が活字を濡らし、じわりと滲む。
『あっ、汚れちゃった。ごめん』
「問題ありません。重要なことが書かれているわけでもないですし」
どうせ読み終わればゴミとして棄てる。
『ちょっと待っててね……』
手の水気をスカートの裾で拭いながらホマレが号外を持ち直した。
『うーん……二冠かぁ。すごいよね』
ホマレは号外の写真を見ながら呟く。
雨の中ゴールを通過する瞬間のウマ娘の姿が印刷されている。
ドリームジャーニーの妹、オルフェーヴル。ホマレより年上だが、デビューはホマレより一年遅い。
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