第2章 マイワールド
「静かにして!!それ以上何も言わないで!!」
「まだ何も言ってないんだけど」
「でも、確実に言うじゃん!!"あんた、好きな人でもいるの?"って。そういうムーブしてたもん」
「全部自分の口で言ってるわよ」
「墓穴!!!」
その場に崩れて私はじたばたと暴れる。
まるでもがき苦しむ芋虫のように。
娘の奇行に慣れているお母さんは「寝なさい」とだけ言った。
冷たい。
「こんな状態で寝れるかよ、お母さんは恋をしたことがないんだ!!」
「恋をしたことがないならあんたは今ごろここにいないんじゃない?」
「それはそうだ!もういい!!寝る!!」
「はーい、おやすみ」
恋をしたことがあるなら乙女心と恋心わかるはずだろ!!
こうなったら友人たちに相談するしかない。
だけど、友人たちから返ってきたのは「飯作るだけでしょ?接点あるか?」「マネージャーでもない一般人が練習のサポートとかするわけもないからね」「せいぜい差し入れするくらいでしょ」「大丈夫だよ、たぶん月島くんと話す時間はない」と現実を突きつけられた。
なんで妄想しないんだ、こいつら。
もしかしたらってことを考えないの?
え、恋ってこんなにドライなものだっけ?
それかこいつらが一度も恋をしたことがないだけでは?
一周回って冷静になってきた。
こいつらには腹立つけど。
「もういいです。寝ます。明日覚えてろ」
それだけ送って私は布団に潜りこんだ。