第1章 ボーイズ&ガールズ
パンを咥えて走って、転校生とぶつかるとか。
冴えない女子が、モテるイケメン男子と仲良くなる、とか。
職場のイケメン御曹司と、いつの間にか恋仲になるとか。
小さい頃に別れた幼馴染みと再会して、彼氏がいるのに三角関係になるとか。
そんなの少女漫画の世界だけだと思っていた。
胸がきゅんとするような恋愛なんてしないと思っていた。
だけど―――恋をした。
少女漫画のような恋ではないけれど。
その人は頭がよくて毒舌で皮肉屋な高身長のイケメン。
月島蛍。
隣の席の男子生徒。
彼は前を向いて黒板の文字をノートに書いている。
その横顔がダビデ像のように美しくて、感嘆のため息が出る。
国宝級の顔面とはこのことを言うんだろうな。
「……なぜ人類はこの美しさに気が付かないんだ。おかしいでしょ。いや、まって。気づかれても困るな。私だけが分かっていると言う優越感に浸れなくなってしまう。ああ、でも、知ってほしい。全人類に。言葉に表せないほどの芸術的な横顔を……」
「空知~。何言ってるのかわからんが漏れてるぞ、おそらく心の声が」
「え⁉声に出てました!?」
「出てた出てた。だから、この問題解いてみろ」
数学の先生に冷静に突っ込まれ、私の顔は真っ赤に染まる。
まさか口に出ていたとは……。
月島蛍という男を好きになってから、本音が零れてしまうことが多くなってしまった。
恐るべし、月島蛍。
恐るべし、恋愛脳。