第5章 夏
ジリジリと陽が差し込む夏の午後。窓を開け放った教室に、セミの声とゆるやかな風が流れ込む。授業が終わった後の教室には、ゆうな、悟、夏油、硝子の4人が揃っていた。
「なぁ、今週末さ。海、行かね?」
悟がいつもの調子で椅子を後ろに倒しながら言い出す。
「海?」
ゆうなが目をぱちくりさせると、硝子が即座に反応した。
「行く。マジで行く。暑すぎて死ぬ」
「任務の予定はなかったな。空いてるね」
夏油が手帳を確認しながら静かに頷く。
「ほら見ろ、完璧なタイミング。な?ゆうなも行くだろ?」
悟がにやりと笑ってゆうなを見やると、ゆうなは小さく頷いて微笑んだ。
「うん、行きたいな」
その後、ゆうなはさりげなく硝子の袖を引っ張り、そっと耳元で囁く。
「ねぇ、あとで……一緒に水着見に行かない?」
「ふふ、そう来たか。いいよ、行こ」
硝子が口元を緩めて小さく頷く。
「ん?なんだなんだ?内緒話??」
悟が眉をひそめて身を乗り出してくる。
「五条は黙ってて」
「な、内緒!亅
女子二人からの拒絶に悟は素直に引き下がりながらも少し頬を膨らませた。
「……ちぇっ、なんか楽しそうなことやってんじゃねーの?」
「五条はどうせナンパ〜とかスイカ割り〜とか考えてんでしょ」
硝子が呆れたように言うと、
「それが海の醍醐味だろ?でもまぁ、みんなで一緒に遊べればそれで良くね?」
悟は飄々とした調子で返す。
「騒がしいのは構わないが、迷惑かけるなよ。場所は私が選んでおくよ」
夏油が淡々と話すと、ゆうなはにこっと笑って、
「ありがと、夏油くん。楽しみにしてるね」
「よし、じゃあ寮戻ったら荷物の準備と計画立てるぞー」
悟が両手をバンっと叩いて気合を入れる。
「……あんたが言うと不安しかない」
硝子がぼそっと呟き、ゆうなが小さく笑った。
こうして、夏の海計画はにぎやかに始動した――。