第3章 夜
硝子の部屋
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
夜の静けさと、部屋にはふたりの笑い声が溶け込んでいる。
「てかさーゆうな、気づいてるでしょ? 夏油のこと、完全に気にしてるやつの距離感だって」
「えっ……そ、そうかな……でも夏油くんって、私の事妹みたいって言ってたし……」
「バカだなあ〜。夏油ってああ見えて、意外と待つタイプだよ? 言ってこいって思ってるんじゃない?」
「……言ってこいって、そんな……私から……?」
硝子がゆうなの肩を軽くつついてにやっと笑う。
「ま、あたしは応援するよ。でもさ〜、五条が知ったらどうなるかな〜?」
「っ……やめて、そういうこと言うの……」
ゆうなは急に視線を伏せる。硝子は少しだけ眉を下げ、真剣な口調で言った。
「……ゆうな。お前、誰にだって優しいけどさ。誰が自分を見てるかくらい、ちゃんと自覚したほうがいい。じゃないと……誰かが傷つく」
「……うん。わかってるよ……」
ふたりの間に、少しだけ静けさが落ちた。
【寮・悟の部屋】
布団の中、悟はスマホを持ったまま、天井を見つめていた。通知は何も鳴らない。ゆうなからの連絡も、ない。
(……また傑と一緒にいたのか)
思い返すのは、さっきのコンビニの帰り道。部屋の窓から、ばっちりその姿は見ていた。硝子は少し離れタバコを吸っていて、ゆうなと傑がふたり並んで、楽しそうに話してた。
(……っ、俺が……)
スマホを握る手に力がこもる。
(俺がずっと、隣にいたのに)
静かに掛け布団をめくり、頭まで布団をかぶる。頭の中には、笑っているゆうなの顔。
その笑顔が、だんだん誰かに奪われていく感覚に、胸が焼けるように疼く。
「……俺の、ゆうな……」
五条は拳を強く握った