すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第15章 熱に浮かされて
凜桜も速めに仕事を終えれば在宅に切り替えてオフィスを後にする。
「それじゃ…すみません…諒くん…」
「いいよ、大丈夫。きっと仕事してるだろうし」
「…そうなんですよね…」
「そっちは任せるよ」
「すみません…」
「いいって、んじゃ!」
そうして凜桜を見送った諒。なるべく急いで…と凜桜は家路に向かっていく。
カチャリ…と鍵を開ければリビングにその姿はある。
「…やっぱり…」
ため息と一緒に凜桜はゆっくりと入っていく。
「…どうした」
「帰ってきて在宅に切り替えました。」
「…切り替えるって…何も聞いてねぇけど?」
「言ってません」
「…ハァ…」
買ってきた冷えピタを箱から取り出せば無言で凜桜は住吉の額に張り付ける。
「…君にここまで世話を焼かれるとはな…」
「秘書ですし?」
「秘書の仕事に俺の額に冷えピタを張るって業務はあったか?」
少しばかりからかい気味に住吉は笑みを浮かべた。
「ありません。でも今となっては例外業務もだいぶこなせるようになりました。」
「凜桜は例外を作らないタイプだと思ったが?」
「そんな事はありません」
「…ーー・・・あぁ、そうだな、別会社の社長をひっぱたくのもある意味例外だな」
「それは忘れてください?」
他愛もないような会話をしながらも額に張られる冷えピタを素直に受け入れた住吉。しかしふっと漏れる吐息はかなり熱っぽい。
「…本当に…無茶ばっかり」
「会社を動かす立場だ。多少は致し方ない」
「それで倒れたらどうするんですか」
「倒れねぇよ」
即答するその声、それは熱に浮かされていても何も揺るがなかった。いつもなら強いと感じる凜桜もこの時ばかりは胸の奥で苛立ちにも似た感情が沸き上がってきた。