第11章 話す覚悟

「言ってみな？」
「…いえませんよ…」
「言ってみないとわからないだろ」
「…それは…そうかもしれないけど…全部なくなりそう、で」
「なくならないかもしれないだろ？」
「……ｯｯ」

そういったっきり、住吉は言葉を止めた。凜桜の切り出しを待っていたのだ。少し間をおいて、凜桜はためらいがちに口を開いた。

「…住吉さん…」
「ん？」
「傍に…いてもいいですか？」
「…ん」
「助けてほしいって…言いたいのかもしれないです。でも…私まだ何もできてないから…逃げる事しかできてない。だからどうにもなくなったら助けてください…」
「どうにかなる前に言ってこい」
「でもそれじゃ…」
「言ってるだろ…大丈夫だって…。」

緊張の糸が崩れかけたからか…凜桜の目かはツゥー…っと一筋の涙が流れていく。

「…たく…」
「男運ないって言いたいんですよね、言っていいですよ。私が一番わかってます」
「…男運がないって？」
「はい。そうじゃないですか…」
「まぁなー、確かに過去の男には男運使わなかったのはいい事だな」
「…へ？」
「俺も一応男なんだけど？」
「……はい」
「俺も運無しに入るわけ？」
「…それは…」
「なるほどな、よーっく分かった」

そういうと今までの空気はどこへやらと言わんばかりに住吉はすくっと立ち上がり、缶ビールを持ってその場を離れていく。

「え、あ、違う…あの…」

背中から追いかけようとした時だった。足がもつれて凜桜は住吉の背中から巻き付く形になった。

「すみません…あの…」
「大胆だな」
「…そうじゃなくて…ｯｯ」

しかしくすくす笑うだけで距離を取ろうともしない住吉だった。