すき…キス…ミルフィーユ~秘書は代表と絶賛同居中!~
第10章 度重なる不安材料
今にも泣きだしそうな様子の凜桜。ただ、吐き出してからハッと気づいたのだろう。
「…すみません…」
「いや、いい」
「……なので…その…受理してくれると助かります。」
そういった凜桜の手から封筒を受け取れば目の前で住吉はビリリ…っと二つに割いた。
「…ぇ…ッッ」
「もう一回言うぞ?そんな理由で簡単にやめられると思うな」
十分すぎる理由だと凜桜は思っていた。それでも住吉にしては不十分な理由だった。
椅子に座る住吉が少し視線を上げた時、その視線が凜桜自身と交わった時だ。凜桜はドク…っと鼓動が跳ねる。
「今後もこんな理由で受理は一切しない。迷惑かけるだとか、困らせるだ?十分だ。さっき凜桜はこんな自分が嫌だって言ったな?だったらこれから変えればいいだろ。厄介事を引き寄せたって、それは過去の凜桜がしたことだ。過去の自分にけじめを付けずに次には進めない。その為に自分一人でできないなら周りを頼れ。何のための『俺』だ」
「…だけど…ッッ」
「だけどじゃない」
ガタっと椅子から立ち上がり住吉は凜桜の前に立った。
「…帰るぞ」
「あの…」
「ほら」
「待って…お願い…!!」
不意に凜桜は住吉の左腕に巻き付く様に捕まえた。
「…どうした?」
「外に…いるから…」
「ぁ?」
「圭介がいるから…ダメ…」
「だめって事はないだろ…」
しかし少し震えている凜桜を見て小さくため息を吐いた住吉。
「何をそんなにおびえんのか分かんないけどさ?それならなおさら一人では帰せねぇから。」
そう話して凜桜が自身から離すのを待った。ゆっくりと手をほどくタイミングで一緒にオフィスを後にした。