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【DC】短い夢を見た【諸伏高明】

第1章 諸伏警部と陽気な彼女


「このまま僕の家へ行っていいですか?」
「行ってもいいけど、先にご飯食べたいなー」
「まずは秋穂さんに僕をご賞味していただきたいのですが」
「ふふっ。メインディッシュは満を持して食べないと。それに私──好きなものは最後まで取っておくタイプなの」
「貴方と言う人は……」
「さあさあ。私に意地悪されたくなければまずご飯にするわよ、あっきー!」
「秋穂さんこそ、僕に手ひどくされたくなければ賢い選択をしてくれると信じていますよ」

 お互いにこにこと狐につままれたような笑顔で言葉を交わしてから、ふっとどちらからともなく吹き出した。似ていないようで似ている僕たちはきっと相性がいいのでしょう。もちろん──夜の相性も、含めて。

「帰ったら、パスタでも食べながら昨日の番組を今度はテレビで見ましょう」
「スマホで見たんじゃなかったの?」
「スマホでしか見ていません」
「本人がいるのに、チラ映りしかしてないやつをわざわざ大画面で見る必要ある?」
「それもまた一興ではありませんか」
「テレビだけじゃなくてリアルな私のことも見てよね」
「ええ。ベッドの上でたっぷりと」
「警察官のくせに不埒だ!」
「もう退勤したので今はプライベートです」
「ああ言えばこう言う」
「秋穂さんには負けますよ」
「どの口が」
「この口です」

 トントンと人差し指で自分の口元を示せば、口をへの字に曲げながらじと目で僕のことを見てくる秋穂さん。僕が言わんとすることがきっとわかっているのだろう。不服そうにどうしようか悩んでいるその姿はとてもいじらしい。
 少しばかりの時が流れ、彼女の小さなため息が聞こえた直後に感じた頬への柔らかな感触と、色濃くなった秋穂さんの香り。すっと離れていった彼女は「これで満足?」と子どもに言い聞かすような声色で僕に問う。これで満足などするはずがないとわかっているはずなのに、わざわざ聞いてくるなんてズルい人だ。
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