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軌道逸脱と感情の干渉について【チ。/バデーニ】

第7章 不在の証明



 *

 ある朝、クラボフスキさんは、洗礼室の掃除道具を片付けながら、何気ない口調で言った。

「中央から文が届いた。……例の修道女が、捕まったらしい」

 私は手を止めた。

「……どこで」
「北の関所近くです。街道沿いの村で隠れていたらしい。巡回していた騎士団が捕えたようで」

 それ以上、私は何も問わなかった。

 だが彼は、わかっていたのだろう。私が知るべき最後のことを。


「処された、とのことです」


 何かが、音もなく砕けた気がした。

 水が一滴、どこかに零れ落ちるように。

 私は何も言わなかった。ただその場に立ち尽くした。教会の天井の高みに目を向けたが、そこには何の救いもなかった。

 光は差していた。静かすぎるほどに。

 彼女の声も、姿も、もうこの世には存在しないと、ようやく知った。

 ようやく――私は、それを知ったのだった。

 
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