第7章 不在の証明
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ある朝、クラボフスキさんは、洗礼室の掃除道具を片付けながら、何気ない口調で言った。
「中央から文が届いた。……例の修道女が、捕まったらしい」
私は手を止めた。
「……どこで」
「北の関所近くです。街道沿いの村で隠れていたらしい。巡回していた騎士団が捕えたようで」
それ以上、私は何も問わなかった。
だが彼は、わかっていたのだろう。私が知るべき最後のことを。
「処された、とのことです」
何かが、音もなく砕けた気がした。
水が一滴、どこかに零れ落ちるように。
私は何も言わなかった。ただその場に立ち尽くした。教会の天井の高みに目を向けたが、そこには何の救いもなかった。
光は差していた。静かすぎるほどに。
彼女の声も、姿も、もうこの世には存在しないと、ようやく知った。
ようやく――私は、それを知ったのだった。