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軌道逸脱と感情の干渉について【チ。/バデーニ】

第1章 因果律の彼方に



「実はジルさん、私はつい最近、中央修道院の試験を受けてきたんですよ。入院許可証も手元にあります」
「へ!? つまり……」

 彼は嬉しそうに頷いた。

「私も近々、天文学を学ぶ身としてこちらに籍を置くことになります」

 私は一瞬、言葉を失った。まさかこんな展開になるなんて、夢にも思わなかった。

「素晴らしいです……! 教育部門で入院するのは相当難関と聞いています。その試験を突破されたなんて、驚きです」
「恐縮です。生活する上で診療所を利用することもあるでしょう。その際は、どうぞよろしくお願いします」


 彼と別れた後、私は胸が高鳴っていた。

 修道女と修道士では建物が異なるため、そう頻繁に顔を合わせることはないかもしれない。
 けれど、同じ空の下、同じ学び舎で過ごせることが、たまらなく嬉しかった。

 そして何よりも――彼が語ってくれた研究の熱意と、入院の報告。そのどちらも、私にとって何よりの贈り物だった。

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