第30章 「善意の逆理 Ⅲ」
「……え?」
眩い光が、空中で複雑な線を描き出す。
私の目の前に浮かび上がったのは、光り輝く、白い花の円陣だった。
「っ!」
真澄の指先が、その光に触れた途端。
バチンッ!
弾かれたような音がして、真澄の身体が後ろへ吹き飛んだ。
私はその場に膝をつきながら、荒く息を吐いた。
口の中に入れられかけていた種が、コンクリートの床に落ちて、小さな音を立てる。
今の、何。
白い花。
円を描く光。
「……?」
屋上へ続く鉄扉の前。
が息を切らしながら、片手をこちらへ伸ばしている。
白い花冠のような光が、その手首の周りで淡く揺れていた。
どうしてここに。
それに、今のあの光はなに?
の力は、送る力……よね。
「……来たんだ、ちゃん」
真澄が、ゆっくりと身を起こした。
弾かれた腕を押さえながら、床に落ちた黒い種へ視線を落とす。
それから、へ目を向けた。
「諏訪烈様が言っていた通り、あなたが邪魔をするんだね」
諏訪……烈……?
聞き覚えがある。
先生とが、何度か口にしていた名前。
を狙っている男。
『Re:bloom』や悠蓮に関わっている、あの――。
「真澄ちゃん、あいつに何を言われたの?」
真澄はへ視線を向ける。
その顔には、罪悪感も迷いもなかった。
「私は、千尋の思いに従ってるだけ。諏訪烈様が教えてくれた。苦しみは、還せばいいって」
風が吹いて、真澄の白いセーラー服の裾が、ばたばたと大きく揺れる。
「あと一人よ」
あと一人。
さっき、私が助けたあの子のことだろう。
を騙して、細井のところへ誘導したあの女の子。
真澄は、まだ終わらせる気がない。