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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」


「それが普通だよ。急にそんな話をされて、はいそうですかって受け止められる方が怖い」

「はまだ若いんだ。子供を持つとか、将来どうするとか、そんなのすぐに決められなくて当たり前」

「……でも」

「そもそも、まだの中には何も生まれてない。今あるのは、せいぜい……」



硝子さんは、心底嫌そうに目を細めた。



「の卵を今か今かと待ち構えてる、何億っていう五条の分身だけだ」

「……っ」



その絵面を想像したら、思わず吹き出してしまった。



「しょ、硝子さん……その言い方……」

「事実だろ」

「そ、そうですけど……っ。ふふっ、でも……そっか」



笑ってしまった拍子に、心の底で固まっていたものが、ふっとほどけた気がした。



「だから、罪悪感を持つ必要もない」

「……」

「五条に覚悟があることと、が今すぐ同じ場所まで行かなきゃいけないことは別だ」



硝子さんが、ゆっくりと私の髪を撫でる。



「追いつけてないなんて思わなくていい。はの速さで考えればいいさ」

「……私の、速さで」



視界がじわりと滲んだ。



「自分の人生だ。が決めればいい」



硝子さんはそう言って、頭から手を離した。
頭の上に残っていた温かさが、少しだけ名残惜しい。



「ただ、飲むなら早い方がいいぞ」

「……はい」

「明日、念のため検査する。今日はもう何も考えずに休め」



そう言い残して、硝子さんは部屋を出ていった。
静かになった部屋で、私は手の中の薬を見つめた。


小さな錠剤。
それなのに、さっきとは違う重さに感じた。


錠剤を口に含んで、水で流し込むと、薬はあっけないほど簡単に喉を通っていった。


飲んじゃった。
ううん。これでいいんだ。


ベッドから降りると、ひんやりとした床の感触が足の裏から伝わってきた。


窓の方へ向かうと、夜の闇が降りた窓ガラスに、ぼんやりと自分の顔が映っている。
じっと、ガラスの向こうの自分を見つめた。
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