第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」
「早急にお願い」
「……承知いたしました」
伊地知が一礼したのを見届けつつ、僕はソファから立ち上がった。
「さてと。それじゃあ僕は……細井の取り調べでもするか」
「えっ……?」
手帳をしまおうとしていた伊地知の動きが、ピタッと止まった。
ぎぎぎ、と錆びた機械みたいな動きで僕を見上げてくる。
「ご、五条さんが……直々に、やられるのですか……?」
「当たり前でしょ。あいつ、の裸を見た上に、弄んだんだぞ」
「……っ」
伊地知が、顔面を蒼白にして後ずさった。
ただの取り調べで済ませるつもりなんて、最初からない。
どんな目に遭わせようか。
いや、どうやって絶望させてやろうか。
「……殺していい?」
「ご、五条さんっ! 殺しちゃダメですっ!?」
伊地知が、裏返った悲鳴を上げてすがりついてきた。
顔を真っ青にして、全力で僕を止めようとしている。
「えー。一回くらいよくない?」
「よくありません! 聞き出さなきゃいけない情報が山ほどあるんですからっ!」
泣きそうな顔で訴えてくる。
うるさいなぁ、もう。
(……わかってるって)
『Re:bloom』のこと。
を狙った本当の理由。
背後にいる連中のこと。
諏訪烈のこと。
全部吐かせるまでは、ちゃんと生かしておいてあげるよ。
……そのあとは、知らないけど。
「はいはい。じゃあ、さっさと行こっか」
僕は適当に手を振って、談話室の扉へ向かう。
「あっ、待ってください、五条さんっ!」
慌てた伊地知の足音が、ドタドタと僕の背中を追いかけてくる。
そのまま、僕たちは談話室を後にした。