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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」


静まり返った部屋の中で、僕はちらりと視線を動かした。



「……伊地知」

「ヒッ、はいっ!?」



さっきから胃のあたりを押さえて縮こまっていた伊地知が、ビクッと肩を跳ねさせる。



「硝子、なんで怒ってるの?」

「…………私に聞かないでください」



心底疲れたような顔で、伊地知が目を逸らした。


(……なんでよ)


責任を取るって言ったのに。



『お前だけの問題じゃないだろ』



じゃあ、何の問題だっていうの。
ただ、一緒にいたいだけなのに。
男は分かってないって、どういうこと?
考えてもわかんねー。


僕は一度息を吐いて、顔を上げた。



「……それより、伊地知」



声をかけると、伊地知が恐る恐るこちらを見た。
さっきまでの緩んだ空気を、意識的に切り捨てる。



「ちょっと、調べて欲しいことがあるんだよね」

「は、はい」



伊地知が慌てて姿勢を正し、内ポケットから手帳を取り出す。
僕はソファの背もたれに体を預けたまま、声を一段階低く落とした。



「五条家から盗まれた、【執】の種子――しゅうじ、と呼ばれてる呪物」

「……五条家の、ですか」



手帳に向かっていた伊地知のペンが、一瞬だけ止まる。
御三家の内部情報に踏み込むことの重さを、彼なりに理解しているんだろう。



「そ。それと」



先ほどの悠蓮の言葉が、頭をよぎる。



『相変わらず、その眼は何も見えていないのだな』



六眼を指して言ったのだとしたら、ただの挑発じゃない。
あいつは、僕に見えていない何かを知っている。


そして――



「魔女……悠蓮が言ってた、『あらや』って言葉について」



ただの偶然とは思えない。
の魔導が、あんなに揺らいだのは初めてだった。
何か、きっかけがあったに違いない。

盗み出された呪物。
悠蓮が口にした不可解な言葉。


バラバラに見えるそれらが、嫌な形で繋がりそうな気がしていた。
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