第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」
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は今ごろ僕のベッドで眠っている。
シャワーを浴びて、僕のシャツを着て。
さっきまで終わりたくないと言っていたくせに、布団に入れた途端、ころんと眠ってしまった。
さすがに疲れたんだろう。
その間に、僕は談話室で待っている硝子と伊地知のところへ向かった。
の状態と、僕がした“治療”について。
最低限の報告だけ、さっさと済ませる。
その結果が、これ。
「……はぁ?」
談話室に、底冷えするような硝子の声が響いた。
手に持っていたコーヒーカップが、テーブルに乱暴に置かれる。
「だからー、仕方なかったんだってば」
僕はソファの背もたれに深く寄りかかって、わざとらしく両手を広げてみせた。
「あれ以上放置したら、の魔導がどうなるか分からなかったし。応急処置としては最適だったわけ」
「……だからって、五条」
硝子が、本物のゴミでも見るような目で僕を睨みつけてきた。
その少し後ろでは、伊地知が胃のあたりを押さえて真っ青な顔をしている。
(……うん。まあ、予想はしてたけど)
見事なまでに。
硝子も伊地知も、完全にドン引きしている。
そりゃそうか。
『治療』という大義名分を振りかざして、まだ未成年のにゴムも着けずに中に出したのだ。
恋人とはいえ、何回も。
「でも、はちゃんと戻ったし?」
にこりと笑って見せると、硝子は深く、本当に深くため息をついた。
「お前な……」
「もしものことは、ちゃんと考えてる。心配しないでよ」
これでも僕なりに本気で言ったつもりだ。
の全部を背負う覚悟なんて、とうにできている。
けれど、硝子の冷ややかな視線は変わらなかった。
「……考えてるって、五条」
彼女は白衣のポケットに手を突っ込み、立ち上がる。
「お前だけの問題じゃないだろ」
「え?」
「だから、男は分かってないって言ってんの」
吐き捨てるようにそう言って、談話室のドアへ向かって歩き出した。
「硝子?」
「のとこ。……様子見てくる」
そのまま、バタンと無情に扉が閉まった。