第29章 「善意の逆理 Ⅱ**」
けれど、身体に残る違和感に気づいたのか、の視線が下へ落ちていく。
「……え?」
はだけた病衣。
露わになった自分の身体。
ぐっしょりと濡れて、シミのできたシーツ。
そして、彼女自身の太ももを伝う白濁の跡。
みるみるうちに、の顔が耳の先まで真っ赤に染まっていく。
「っ……!?」
は弾かれたように身体を起こすと、手元のシーツを引っ張り上げた。
そして自分の身体をぐるぐると包み込んで、ベッドの端まで後ずさる。
「え、あ、あれ……っ!? わたし、なんで、えっ……!」
いつものが戻ってきた。
この顔が見たかった。
ずっと。
はさっきから何かを確かめるように、シーツの下でモゾモゾと動いている。
やがて、シーツの中から出てきた指に、白くとろりとした液体が絡みついていた。
(あ)
は、それをじっと見つめている。
数秒の沈黙の後、それが何を意味するのか理解したらしい。
「あ……、えっ……、う、そ……っ?」
声にならない声を漏らして、口をぱくぱくと開けたり閉めたりしている。
「……くくっ」
その反応がたまらなくて、自然と笑い声がこぼれた。
僕はベッドの端でシーツを握りしめている彼女へ、膝立ちで這い寄る。
「ひゃっ……、せ、んせ……っ」
後ずさろうとするけれど、そこはもうベッドの端だ。
シーツごと、両腕で彼女の身体を囲い込む。
「それ、僕の。の中に出しちゃった」
の動きが、完全に止まった。
目を見開いたまま、石像みたいにフリーズしている。
今にも魂ごとどこかへ飛んでいきそうな顔をしている。
(……やりすぎたかな)
からかうのは一旦やめて。
僕は彼女の手首を握り、指についたものをシーツで拭き取った。
「仕方なかったんだよ」
驚いて固まる彼女の頭を、ポンポンと撫でる。