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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第7章 「残るのは、君だけ」


「……先生。今まで、ありがとうございました」



そして、掴まれた手首を振り解こうと、一歩身を引く。
歩き出そうとしたその瞬間――


五条の指がさらに食い込み、骨を圧迫するほどの力が加わった。



「……っ、痛っ!」



思わず声を上げたに、五条は低く、苛立ちを滲ませて言い放つ。



「何それ? 何勝手に人生終わらしてんの? 僕に、が処刑されるのを黙って見てろって言うわけ?」



その声音には、冷たさよりも焦燥と怒りが混じっていた。
目隠しの奥から放たれる気配が、鋭く肌を刺す。


はその圧に怯えながらも、震える声で返した。



「……先生に、私のことで迷惑かけたくないから」



その言葉に、五条の声が、さらに低く沈んだ。



「……僕がいつ、迷惑だなんて言った?」

「だって……」



視線を逸らしたが、ためらいがちに続ける。



「先生にだって立場があるでしょう? 私みたいな異端者、庇ったら……」

「立場?」



短く吐き捨てるように笑い、五条はぐっと手首を引き寄せた。


吐息が触れる距離。
わずかな体温と鼓動まで、肌を通して伝わってくる。



「そんなもんより、僕はの方が大事だって言ってんの」

「……っ」



の喉がひくりと動き、声が出ない。



「迷惑かけたくない? 勝手に決めんなよ」



五条の声音は怒りを帯びているのに、不思議と揺るがない熱を孕んでいた。


の瞳が、涙で滲んで揺れた。



「先生にとっては……私は、ただの生徒でしょ!」



震えた声が、最後には荒げられていた。



「もう……ほっといてください!」



その言葉が、鋭い刃のように五条の胸に突き刺さる。


――ただの生徒。


それを聞いた時、すぐに口が動かなかった。
代わりに、胸の奥でずっと渦巻いていた何かが、輪郭を持ち始める。


処刑のことをに言わなかったのも――
が恵と笑っていた時も――
僕と目を合わせようとしなかった時も――
そして、あの夜、キスをした時も――


(……ああ、そっか)
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