第28章 「善意の逆理 Ⅰ**」
「今動ける女子生徒って、誰かいる?」
「真希さんは現在、別の討伐任務で出払っています。……今なら、釘崎さんですね」
「オッケー。じゃあ決まり」
先生はそこで、私に視線を向けた。
「遺体から微かに呪力の残穢があった。熊本のときとはまた別のもの。呪詛師が裏で糸引いてる可能性もあるし……、野薔薇と組んで、そのお嬢様学校に潜入してきて」
「……潜入、ですか?」
「そ。学校の中を探って、怪しい動きをしてる奴がいないか見てきてよ。種の線も含めてね」
潜入なんて、私にできるのかな。
どうやら、不安が顔に出てしまっていたらしい。
そんな私を見て、先生は人差し指をぴっと立てて、私の鼻先に近づけた。
「大丈夫だって。はすぐ顔に出るし隠し事とか絶望的に向いてないけど、その分、天然でちょっとどんくさい『温室育ちのお嬢様』なら素でいけるって」
「……それ、褒めてます?」
「とりあえず語尾に『〜ですわ』ってつけて、優雅に紅茶でも飲んでれば完璧なお嬢様に見えるから」
先生がわざとらしく、小指を立ててティーカップを持つような仕草をした。
七海さんと硝子さんが眉間を押さえて苦い顔をしている。
伊地知さんと私は、一緒に苦笑するしかなかった。
ふざけたアドバイスだけど。
でも、そのおかげでちょっとだけ気が楽になったかも。
私は震える指をぎゅっと握りしめて、先生をまっすぐに見つめた。
「必ず、真相を突き止めてみせます」
「これ以上、私の花を……あんなふうにはさせません」
私の答えを聞いた先生は、満足そうに微笑んだ。
「期待してるよ、」
その声は、さっきまでのふざけた調子ではなくて。
私を信じて送り出してくれるような、静かで、真剣な響きだった。