第2章 「はじまりの目と、最強の教師」
「誰かに置いていかれるのは……寂しい」
一瞬だけ、彼の笑みが消えた気がした。
(あ……変なこと、言った?)
けれどすぐに、ふっと口角を上げて――
「へぇ。そういう子なんだ。……いいね」
すると、夜蛾学長が軽く咳払いをして、まっすぐな声で告げた。
「この高専は、呪術を学ぶ場だ。だが、未知を排除する理由にはならない。 保護と解明のため、の入学を許可する」
家入さんが、少しだけ表情を緩めて言った。
「ようこそ、呪術高専へ」
「……ありがとうございます」
言いながら、少しだけ視界が滲んだ。
(不安しかない。でも――ここに入れば、少しは自分のことがわかるかもしれない)
立ち上がって、3人に深くお辞儀をする。
そのまま、扉に手をかける。
ドアノブが冷たい。
でも、それすらも、自分が今ここにいる証拠みたいだった。
面談室の扉が静かに閉まり、
ほんの少し、背中が軽くなった気がした。
その小さな背中を家入は静かに目で追い、五条はどこか楽しげな笑みを浮かべて見送った。
退室したの背を見送ってから、五条が笑う。
「やっぱり面白いね。あの子」
家入はただ、呆れたような視線を五条に向ける。
「呪力ゼロだよ? 僕の六眼でも彼女の力は全く読めない」
夜蛾は腕を組んだまま短く返す。
「だからこそ、慎重に扱え。……分かってるな、悟」
「言われなくてもわかってますって。ま、僕に任せてくださいよ」
そう言った五条の声は、さっきまでの軽さとは違っていた。
彼の目の奥で、何かが静かに動き出していた。