第7章 「残るのは、君だけ」
校舎二階の教室。
窓際に立つ五条は、外のグラウンドを何気なく眺めていた。
風に乗って、甲高い声が届く。悠仁だ。
その隣で、恵の手を取りながら笑うの姿がある。
ほんの青春のひとコマ――それ以上でも以下でもないはずなのに。
(……なんだ、これ)
が他の誰かと笑っているだけで、胸の奥が静かにざわめく。
理由を探しても、指の間から水のように零れ落ちていく。
「五条」
不意に背後から声がして、五条は振り返った。
白衣の硝子がファイルを抱えて立っている。
「これ、頼まれてたの診断記録」
硝子が差し出すそれを、五条は片手で受け取った。
「サンキュー、硝子」
視線を再び窓の外に戻す。
硝子もその隣に並び、同じ景色を見下ろした。
「――査問会、何か策はあるのか?」
五条は小さく息を吐く。
「上はたぶん、査問会まで待たないね。“任務中の事故”とか言って、を消す気だよ。……悠仁の時みたいに」
「……じゃぁ、どうする気だ?」
「簡単だよ。ちょっとでも戦えるようにして、僕の視界から外さない。それだけ」
窓枠を指先で軽く叩きながら、グラウンドの一年たちを見る。