第24章 「可惜夜に眠る 後編②**」
別荘のテラスから、僕は手すりに体を預けて、砂浜で騒ぐ生徒たちを見下ろしていた。
「うらぁっ! 伏黒、勝負だ!」
「こっち向けるな! お前は、小学生かっ!」
両手に花火を持った悠仁が、恵を追いかけ回している。
真希とパンダはそれを見て大笑いし、棘も楽しそうに手を叩いていた。
その騒ぎから少しだけ離れたところ。
がしゃがみ込んで、線香花火の小さな光を見つめている。
野薔薇が隣に座って何かを話しかけると、は弾かれたように顔を上げ、柔らかく微笑み返した。
昼間の死闘と、大泣きしていた顔も嘘みたいに。
すっかり、普通の年頃の顔に戻っている。
「随分と、普通の顔で笑えるようになったじゃないか」
背後から響いた声。
振り返らなくても、プシュッと缶を開ける音で誰かわかる。
硝子がゆっくり歩いてきて、僕の隣に並んだ。
「……みんないい顔してるよ」
花火の光に照らされる生徒たちを眺めながら、そう答える。
「なんか、昔を思い出すね」
「……そうだな」
硝子が缶ビールを傾けながら、静かに相槌を打った。
火薬の匂いと波の音が、青かったあの頃をふっと連れてくる。
「……てっきり夜は、と部屋に籠るかと思った」
「何それ。僕がそれじゃ、獣みたいじゃない」
わざとらしく口を尖らせてみせると、硝子が呆れたように鼻を鳴らす。
「事実だろ。あんな痕つけやがって」
「……」
反転術式が効きにくいと知っていて。
それでも、余裕をなくして痕を刻み込んだ夜の記憶が蘇る。