第22章 「可惜夜に眠る 中編**」
「どうしてあの時、夏油さんを見逃したんですか。それなのに……私のことだけ、責めないでよ……っ」
言ってはいけないと分かっているのに。
溢れ出した感情は、もう止められなかった。
「先生だって……夏油さんのこと、ずっと引きずってるくせに!」
悲鳴のような声が、静まり返った廃村に響き渡った。
叫び声が、湿った冷たい空気に吸い込まれて消えていく。
(……あ)
しまったと思った時には、もう遅かった。
先生の動きが、ピタリと止まって。
その蒼い瞳が、ほんの一瞬だけひどく無防備に揺らいだ気がした。
「ごめん、なさ……っ」
慌てて謝ろうと、震える唇から掠れた声を絞り出した。
けれど、その言葉が最後まで形になるより早く。
先生は私から視線を外し、ゆっくりと立ち上がった。
「……ああ。今でも後悔してるよ。あいつを、一人にしてしまったこと」
「だけど、僕はそれから目を背けたことは……一度もない」
たった一人の親友を引き留められなかった、先生の過去。
振り下ろせなかった拳の重さと、どうしようもない喪失感。
それを抱えたまま、それでも前を向き続けているこの人に――
あんな言葉をぶつけるなんて。
自分と同じじゃないかなんて。
自分の醜さと卑怯さに、吐き気がする。
「わかった。好きにしたらいいよ」
いつもの甘やかすような温度は、もうどこにもなかった。
「でも……君の呪いに、他人を巻き込むな」
先生は、私を見下ろしたまま静かに告げた。
「。今の君を、高専には置いておけない」
「……え?」
あまりにも突然で、頭が真っ白になる。
置いておけない。
どういう意味。
それって――。
「呪術師をやめてもらう」
♦︎ 第22章 了♦︎