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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第6章 「月夜、心を濡らす」


後日。

記録棟の奥――厚い鉄扉の向こうにある、特別資料室。
地上の気配を遮断した地下深く、ひんやりとした空気と紙の匂いが満ちている。
ランプの淡い光が、積み上げられた古文書の影を長く伸ばしていた。


地下深くの冷えた空気の中、五条は伊地知から一冊のファイルを受け取った。



「……見つけました。“悠蓮”の記録です」



伊地知が眼鏡の奥で緊張を隠せないまま言う。
手渡されたファイルの中には古びた紙が数枚綴じられていた。


「お、さっすが伊地知。仕事早いねー」



そう言いながら、五条は中身を覗き込み――眉をわずかにひそめた。



「……って、資料これだけ? ちゃんと調べた?手抜きしてなーい?」



冗談めかす声に、伊地知は慌てて端末を抱え直した。



「も、もちろんです!高専が保管している全ての記録を確認しました。ですが、残っていたのはたったそれだけです」



そう前置きしてから、伊地知は書類を指でなぞりながら説明を続ける。



「“禁術系譜書”……これは、呪術史の中でも記録抹消された術式をまとめた資料です。そこに“術式に分類できない力の発動例が列挙されていて……その中に“悠蓮”という名前が出てきます」



五条はページをめくり、古びた文字列を声に出して読んだ。



「“魔導をもって呪を焼き払う者。術式の外に立つ、もうひとつの原理”……」



目隠しの奥で視線が鋭さを増す。



「これは術師としてじゃなく、“異端者”として書かれてるな。――“理を乱す者、記録より削除すべし”」



さらに行を追った五条の指が、ある一文で止まった。
そこには、黒々とこう記されていた。



「……“かの女、火刑に処す”」



低く、吐き出すように呟く。



「つまり悠蓮は“呪術体系の外にある力”を使った。そしてその力を理由に――火炙りにされたってことか。それも――」



五条はページから目を離し、天井を仰ぐ。



「……千年前に、ね」
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