第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
バスに乗り込むと、すでにみんなが席に着き始めていた。
「私、窓側〜! 真希さん、隣座りましょ」
「一人で座れよ。狭いだろ」
真希さんは口では文句を言いながらも、野薔薇ちゃんの隣に腰を下ろす。
その後ろでは、パンダ先輩と狗巻先輩と虎杖くんが、わちゃわちゃ言いながら一番後ろの広いシートを確保していた。
伏黒くんは、その少し手前の席に静かに一人で座っている。
(どこにしようかな……)
別に誰と座るって決めてたわけじゃないけど、野薔薇ちゃんの隣に座る気でいたから、少しだけ拍子抜けする。
(……まあ、たまには一人でもいいか)
空いていた前方の窓側に腰を下ろし、カバンを膝に乗せて座る。
すると――
「あ、ここ空いてんじゃん」
不意に頭上から声がして、視界に影が落ちた。
顔を上げると、先生がニッと笑っている。
「隣、いーい?」
「えっ……あ、はい」
断る理由なんてない。
頷くと、先生は当然のように隣にドカッと腰を下ろした。
ちょっと……狭い。
先生は背が高いし脚も長いから、座っただけで隣の空間が一気に埋まる。
肩と肩が、触れそうで触れない距離。
(……ちかい……っ)
どうして先生は、こういうとき普通にしてられるんだろう。
私はただ隣に座られただけで、この距離に耐えきれる気がしないのに。
(気仙沼でのことも……謝れてないのに)
あんなに泣いて、情けないとこまで見せておいて。
それでも何も言えない私は、どこまで甘えてるんだろう――。
先生が足を組み直す気配がして、座席がわずかに揺れる。
その微かな揺れだけでも、反応してしまう。
(……いつも通り、いつも通り)
そう思うのに、意識だけが隣に引っ張られてしまう。
先生の体温とか、呼吸のリズムとか。
そういう、どうでもいいことばっかり拾ってしまう。
目的地に着くまで……私、大丈夫かな。