第21章 「可惜夜に眠る 前編**」
「……それの何が悪いんですか」
あっ……伏黒くん、ちょっと怒ってる。
でも、私も似たようなタイプだから、ちょっと肩身が狭い……
先生は、にやにや笑いながら畳みかける。
「もっとこう、海とか! バーベキューとか! スイカ割りとかさぁ! 若者らしくキャッキャしよ?」
「キャッキャって……」
真希さんがこめかみを押さえる。
「お前が遊びたいだけだろ」
「しゃけ……」
狗巻先輩も同意している様子。
「ま、とりあえず詳しいことは、あとでってことで!」
そう言って、先生は片手を大きく上に掲げた。
「まずはバスに乗って、出発〜!」
「おー! しゅっぱーつ!」
虎杖くんだけが元気いっぱいに答えている。
他のメンバーは荷物を担いで、あきれたようにバスへと向かっていく。
私も旅行カバンを肩にかけた、そのとき――
「、おはよ」
振り返ると、先生がすぐ後ろにいた。
「……先生」
急に、どう声を出せばいいのかわからなくなった。
一昨日のことが一気によみがえった。
泣きじゃくって、取り乱して、先生の前でみっともないところまで見せてしまった自分。
(……何か、言わなきゃ)
でも、その“何か”が、謝罪なのか、言い訳なのか、自分でもはっきりしなかった。
それでも、先生に背を向けたままじゃいけない気がして。
私は、カバンの持ち手を強く握りしめた。
「あの……先生。一昨日は、その……私……」
「はーい、ストップ!」
先生の大きな手が、私の背中をぐいっと押した。
「ほら、乗った乗った! いい席取られちゃうよ?」
「あっ、ちょ……先生っ!?」
強制的にバスの入り口へと押し出される。
振り返ったけど、先生はもう他の皆に喋りかけていた。
(……そっか。そうだよね)
(私がいちばん、話すのを避けてきたのに……)
(今さら、って……思われても仕方ないよね)
拒まれたみたいで、苦しい。
でも同時に、助かった気もしてしまって。
そんな自分が嫌で、唇を噛んだ。
「……先生、私――」
それ以上は言えなかった。
私は黙って、バスに乗り込んだ。