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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第20章 「君の心をさらったその日から**」


「……っ」



ぱしっ、と。
乾いた音がして、が僕の手を払い除けた。
手の甲に鋭い痛みが走る。


一瞬、何が起きたのか分からなかった。



「ごめんなさい…… いい子にするから……ッ」
 


は首を小さく振る。
否定するみたいに、何度も。
しゃがみ込んだまま、背中が丸く縮こまる。
涙で濡れた睫毛が震えて、頬を伝う雫が止まらない。



「……」



呼びかけた声が、自分でも情けないほど弱かった。



「……置いてかないで……」

「お父さん……お母さん……っ」



謝る相手は、ここにはいないのに。
それでもは、何度も何度も繰り返す。



「ごめんなさい……ごめんなさい……っ」



その小さい身体が震えているのを、僕は見ているしかなかった。
伸ばした手は、宙に置き去りになったまま。
引っ込めることもできない。
もう一度触れる勇気もない。


ふと、顔を上げたと目が合った。
けれど――
その涙をためた目に映っている青は、僕じゃない。
目の前にいるのに。
こんなに近くにいるのに。
彼女の瞳には、別のものが映っている気がした。


(――ああ、まただ)

 
また、僕の手から消えていく。
あの日と同じように。
傑のときと、同じように。


いやだ。
今度こそ、嫌だ。


……僕が、さらったつもりだった。

 
の心を。
の今を。
の未来を。

 
でも、それは――


僕の手から、あまりにあっけなく君を攫っていく。

 
(僕がどれだけ抱きしめても)

(君は、あの日に引き戻される)


海風が吹いて、髪が揺れた。
繰り返される防災無線の声が、鮮明に耳に刺さる。



……ねえ、。
何があったの? 

   



海が、君の心をさらった――その日から。



♦︎第20章 了♦︎
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