第20章 「君の心をさらったその日から**」
両親がいなくなってから、
私にとっての「家族」は、おばあちゃんだけだ。
高専に入る前は、一緒に暮らしていたから。
毎日顔を見て、声を聞いて、無茶をしたらすぐ気づけた。
でも、今は――
私は寮で、おばあちゃんは一人暮らし。
今日みたいなことがあっても、知るのは全部が終わったあと。
今みたいに、こうして笑ってくれてるからいいけど……
もし、ほんとうに何かあったら。
(……やだな)
じわっと不安が広がる。
呪いでも、任務でもない。
もっと近くて、もっとどうしようもない怖さ。
おばあちゃんが、私の知らないところで静かに年を取っていくこと。
それに、ちゃんと向き合わなきゃいけない時が、
もう近づいてきている気がした。
両親でさえ、まだ私は――
ふと、煎餅の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。
「なんか、ほっとしたらお腹減っちゃったね」
おばあちゃんはテーブルの上のお煎餅袋を開けていた。
「ほら、お煎餅。スーパーの半額コーナーで買ったやつだけど」
「うん、ありがと」
お煎餅を受け取り、一口齧る。
ここに住んでいた頃、よく食べていた。
しょうゆ味のなんてことない、いつものお煎餅。
でも、ひとくち齧るだけで安心できる味がした。
ふとおばあちゃんを見ると、前に見たたときより少しだけ華奢に見える気がした。
(……あれ? 少し痩せた?)
服のせいかもしれない。
気のせいかもしれない。
そう思おうとしたのに、包帯の下の輪郭が前より少しだけ細く見えて。
「……おばあちゃん、ちゃんとご飯、食べてる?」