第20章 「君の心をさらったその日から**」
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「もーっ、心配したんだから……!」
「ごめんごめん!」
おばあちゃんは、頭に巻かれた包帯を指でコンコンと叩いてみせた。
「自転車乗ってたらさ、猫が急に飛び出してきたのよ。避けたら横転しちゃって、うっかり頭ぶつけちゃってさ」
「そしたら近所のさっちゃんが大騒ぎで! 『動かない! 死んでる!』って叫びながら救急車呼んじゃってさ~」
「ちょっと気ぃ失っただけだったのに、大袈裟よねぇ」
「気、失ってる時点で大事だから!!」
思わず声が大きくなる。
高専で「おばあちゃんが意識不明」と病院から連絡が入ったときは、こっちは最悪のことまで考えちゃったというのに。
慌てて病院に駆けつけたら、当の本人はけろっとしていて。
包帯も打ち身もあるけど、検査では異常なし。
そのまま、家に帰れることになった。
「さっちゃんに感謝しないと……ほんとに……」
「はいはい。ありがたい、ありがたい」
「そのうえ、にまで連絡いっちゃってたみたいで、あらまぁって感じ?」
「……ほんと、もう……」
慌てて、あきれて、ほっとして、なんだか疲れた。
「ね、。そんな顔しないの。ばあちゃん、まだ六十手前よ? まだ若いんだから!」
おばあちゃんは、ケラケラ笑っている。
「……もうちょっと、落ち着いてくれてもいいんだけどな……」
私はそう言って、おばあちゃんにお茶を淹れた。
湯のみから立ちのぼる湯気を見つめながら、ひとつ息を吐く。