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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第19章 「死に咲く花」


「悠蓮が“魔女”だろうとなんだろうと……、僕はどうでもいいね」

「……え?」

 

先生はサングラスを外し、こちらを見た。
光を帯びたようなその蒼い瞳は、真剣で、どこまでも真っ直ぐで。



「だってそれ、じゃないじゃん」



あまりにあっさりと言われて、言葉が出なかった。



「じゃあ、“”一個人に僕から質問」

「は、どんな自分でありたい?」



私は……どんな自分で?


私は、“悠蓮の器”で。
悠蓮が生きた記憶も、彼女の痛みも、断片的にだけど私の中にある。
彼女の力があるから、戦えているのも事実で。






でも。


(――だからって、私は彼女じゃない)


悠蓮に呑み込まれたくない。
諏訪烈の思う通りになんてなりたくない。
怖いまま立ち止まっていたくない。
ただ過去をなぞるだけの存在じゃ、先生の隣にはいられない。


(……ちゃんと、自分の足で選びたい)

(そして、“私”として……先生の隣にいたい)



「……私」 

 

唇がまだ少し震えていた。
でも、目はまっすぐに先生を見て話した。



「悠蓮の器じゃなくて……“私”として、ここにいたい」

「過去じゃなくて、今を見て……」



視線を落とし、手のひらを見つめる。
そこに、誰かの命を奪った“記憶”が重くのしかかる。
でも、誰かを守ったことも、誰かを“送った”こともあるのもこの手だ。


ほんの少しだけ、息を吸って続けた。




「誰かを守れるような、そんな……」






「先生と同じ、“呪術師”でありたい」



そう言い切ったとき、先生がふっと笑った。



「悠蓮の記憶や運命も、その力も――」

「“どう扱うか”は、が決めればいい。それが答えだよ」



蒼い瞳が柔らかく私を見る。



「それに、僕が好きになったのは“極蓮の魔女”でも、“悠蓮の器”でもない」



そう言いながら、先生の手が私の頭に触れた。



「泣き虫で、恥ずかしがり屋で、すぐ顔が赤くなって」

「でも、いざって時は度胸があって、自分より他人のことを一番に考えてて」

「人の気持ちには敏感なくせに、自分には不器用で」

「からしやわさびが嫌いで」

「怖がりで」

 

少し黙ってから、いたずらっぽく囁いた。
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