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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第19章 「死に咲く花」


「やっぱり、をそっちに行かせて正解だったね」

「呪いを祓うより、人の気持ちを動かす方がよっぽど難しいんだから」



そう言って、先生がテーブルの上の箱をこちらに押し出してきた。



「はい、ご褒美。新田ちゃんも食べていいよ」

 

ぱかっと開かれた箱の中には、残り少なくなったフルーツ大福。

 

「うわ、マジっすか? あざーっす!」

 

新田さんが満面の笑みで一個を取り、私も少し迷ってから一つ手に取った。

 

「ありがとうございます。いただきます」

 

先生が箱を閉じながら言った。

 

「あ、七海のぶんはないよ?」

「……」

 

七海さんの額が少しひくついたように見えた。
私は大福をテーブルの上に置き、先生たちに顔を向けた。

 

「先生たちの方は……何か、掴めましたか?」

 

私の問いに七海さんが一度視線を下ろし、話し出した。
 


「遺体に残っていた残穢を、辿っていったんですが」

「とあるビルの、地下フロアに行き着きました。市内の……古い雑居ビルの一角です」

「いかにも“後ろ暗い人間”が使いそうな場所でした」

 

先生は口にしていた大福を呑み込み、表情を引き締める。

 

「七海と一緒に、現場まで確認しに行ったんだけど――」







♢  ♢  ♢



地下へと続く、狭くてじめじめした階段。
照明はところどころ切れていて、鉄骨の支柱にはうっすらと埃が積もっていた。
小さく息を吐いて、五条は気だるげに歩を進める。



「……ここです」



階段を下りきった先にある、鉄製の扉。
取っ手には錆が浮き、周囲には消えかけた「立ち入り禁止」の貼り紙が無造作に貼られていた。



「ほんと、こういう場所は気が乗らないよ」



五条はそう呟くなり、片足を踏み出して扉を蹴り破った。
鉄扉が派手な音を立てて開き、錆びた蝶番が軋むように悲鳴を上げる。

 

「……」

 

後ろから、七海のため息がひとつ。
スーツの袖口を直しながら、彼は静かに階段を降りてきた。
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