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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第5章 「境界に口づけて」


翌朝。

教室の前で、は立ち尽くしていた。


(……どういう顔で、先生に会えばいいの)


昨日、逃げるように立ち去ってしまった。
散らかった呪具も放り出して。


あまつさえ――
「先生には関係ない」なんて、声を荒げてしまった。


(……なんて失礼なことを)


胸がきゅっと締めつけられる。
謝らなきゃ、と思うのに、足が動かない。


――それだけじゃない。


昨日、気づいてしまった。
自分の気持ちに。


(好き。……先生が)


その言葉を胸の奥で繰り返すたび、罪悪感が膨らむ。
生徒と教師。
越えてはいけない線。


でも、その気持ちを押し込めようとするほど――
あの女の声が、耳の奥でざわめきだす。


『もっと望め。おまえはもう止まれない。』


自分の中で、あの女が大きくなっていく。
五条を想うたび、心の奥で何かが飲み込まれていく感覚。


(……怖い)


好きなのに、怖い。
その二つがぐちゃぐちゃに絡まって、立っているだけで呼吸が苦しかった。


肩を軽く叩かれ、はびくりと跳ねた。



「おはよ。何突っ立ってんのよ?」



振り向くと、野薔薇があきれ顔で立っていた。



「あ、いや……」



言葉が喉で澱む。
視線を合わせられず、曖昧に笑うしかない。


野薔薇は首をかしげながら続けた。



「あんた昨日、すごい顔で走り去ってたけど……何かあったの?」



――その瞬間。



「おっはよー!」



後ろから、場違いなほど明るい声が響いた。
の背筋が凍りつく。


わかっていた、この声。
忘れられるわけがない。


(……先生)


振り返ると、そこにいつも通りの五条が立っていた。
片手をポケットに突っ込み、もう片方で軽く手を振って。
何も変わらない、あの人。


(……昨日のこと、絶対気になっているはずなのに……)


頭が真っ白になる。
息がうまくできない。



「どうしたの、二人とも? そんなとこで固まって」



五条が軽く首をかしげる。
その仕草すら、にはまぶしすぎて直視できなかった。



「……いや、なんでもないです!」



かろうじて絞り出した声は、自分でも驚くほど裏返っていた。
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