第17章 「花は蒼に濡れる**」
ちゅっ、と音を立てて吸われたあと、
舌先がくぼみの輪郭をなぞるようにゆっくりと這う。
そのまま、唇がふたたび押し当てられ――
今度はほんの少しだけ強く吸い上げるような感触が残った。
「……っ、や……ん……っ」
びくんと肩が跳ねてしまう。
熱のこもった吐息とともに、先生が唇を離し、
「うん、いい感じ」
先生はそう呟くと、親指の腹で鎖骨を優しく撫でる。
まるで何かを確かめるように。
「……いい感じ?」
思わず問いかけるけど、先生は何も答えず、
くすっと小さく笑っただけ。
何が“いい感じ”なのかも、指先の意味もわからないまま。
きょとんと先生を見つめていると、その手がゆっくりと動いた。
気づけば、指先が制服のシャツのボタンに触れていた。
一つ、静かに外される。
次に、もう一つ。
止める間もなく、ボタンは一つずつ、順番に外されていく。
( あ……脱がされる……)
そう思った瞬間、一気に恥ずかしさが込み上げてきて――
「……あ、あの……っ」
「 電気、消してください……っ」
自分でも驚くくらい、声が掠れていた。
口の中が渇くが、それでもなんとか言葉にした。
(だって……だって……)
(明るいままなんて、無理……っ)
顔が火照って、先生と目をまともに合わせられない。
視線をそらしたまま、ぎゅっと先生のシャツの裾を握りしめた。
先生は一瞬だけ、動きを止めた気がした。
でも、すぐにふっと笑って、
「……だーめ」
「さっき、のわがまま聞いてあげたでしょ?」
そう言って、先生の腕が背中に回り、私はくるりと身体の向きを変えられていた。
「わっ……」
気づけば背中がシーツに触れ、柔らかな感触が全身を包み込む。
ふわっ、と。
枕から先生の匂いがした。
洗い立てのリネンの香りに、かすかに混じる知ってる匂い。
何度も抱きしめられたときに感じた、温かくて落ち着く香り。
頬がさらに熱くなる。
視線の先には、上から見下ろしてくる先生の顔。