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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第17章 「花は蒼に濡れる**」


「……わ、東京タワーだ」

 

思わず呟いたその瞬間、私はスリッパの音をパタパタと響かせながら、小走りで窓の方へ向かった。

 
まるで引き寄せられるように、気づけばすぐ目の前まで来ていて、そっと窓に手を添える。


(……きれい……下から見上げるのと全然違う)

 
さっきまでの緊張が、静かにほどけていくのがわかった。
すると、すぐ後ろから先生の声が聞こえた。
 


「“東京”って感じ”するでしょ」

 

振り返ると、先生はどこか得意げな顔で微笑んでいた。
そのまま少しだけ近づいてきたかと思うと、

 

「が見たくなったら、また連れてくるよ」

 

その言葉は、先生にとっては何気ない一言だったのかもしれない。
 

(……また来ても、いいんだ)

 
そう思ったら、胸の奥がじんわりあたたかくなって。
どうしようもなく、嬉しかった。

 
顔がかぁっと熱くなるのが自分でもわかって、
私は慌てて先部屋の中を見渡した。



「……部屋、広いですね。普段使ってないなんてもったいないくらい」

 

なんでもないふりをして、そう言った声が少しだけ上ずってしまったのが自分でもわかった。


家具は少なくて、色もモノトーン。
生活感のないシンプルな部屋――
だけど、その無機質さの中に、
ソファの背にかけられたグレーの上着とか、
ダイニングに無造作に置かれたサングラスとか。

ほんの少しだけ「先生の匂い」が残ってる。

 
ふと、視線を奥へと移した。
リビングの奥。
白いドアが少しだけ開いていて――

その向こうに、寝室が見えた。

 
(……あ、ベッド)

 
シンプルなフレームに、真っ白なシーツが敷かれていて、
ベッドサイドには小さなスタンドライト。


それを見た瞬間、今日の昼間のことが浮かび上がる。


先生の胸元へ顔を寄せて。
遠慮がちに、でももう後には引けなくて。
こつんと額をあずけて、震える声で言ったあの一言。

 

『……先生と、ふたりになれるところ……行きたい、です』



あの時の鼓動も、熱も、先生の手の温度も。
まだ、身体の中に残ってる。
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