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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


最後のやりとりから、既に数日が経っていた。
 

あの夜以来、顔を合わせていない。
任務で忙しかったのは事実だが……
たぶん向こうが避けている。
……いや。避けてたのは、僕も同じかもしれない。


メッセージの入力欄に親指をのせる。


『今日、会いたい』


そう打ち込んで――すぐに消した。


送ったところで、どうするつもりだ。
どんな顔して、どんな言葉を交わせばいい。
……それが、もうわからなかった。


 
頭の奥で、あの日の恵の声が蘇る。
 





「伝えておきたいことがあります。
 の件で……」

「のこと……?」

「……どうやら、あいつ、人に触れると――
 その人の一番苦しい記憶が見えるみたいです」

「何それ?」

「……、津美紀のことを知ってました」
 
「悠仁たちから聞いたとか……?」

「……いえ。俺は、虎杖たちには話してません」



恵はわずかに間を置いて続けた。



「が嘘をつく理由もないですし……
 あれは、おそらく本当に“見えた”んだと思います」


 

恵の声は静かだったが、確信を含んでいた。

 

「多分……、それで最近、人に触れるたびに
 いろんな人の記憶を見て……どうしていいかわからなくて。
 様子がおかしかったんじゃないかと……」










その声が、遠ざかるように消えていく。
気づけば、深く息をついていた。


だから、あの夜。
僕が触れたとき、は拒絶したのか。
それなら、あの反応も……当然だ。


あの子は僕の記憶を、見た。


スマホを伏せて、ゆっくりと目を閉じた。


が見た“僕の記憶”。
きっと、それは――


その瞬間、目の裏に浮かぶ。
あの日のあいつの後ろ姿。

 

「……傑……」



口から、低くこぼれたその名前――
その直後、運転席から伊地知の声が漏れた。



「……あれ?」

「なんだよ、伊地知?」
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