第15章 「その悔いは花冠に変わる」
「いえ、さん、今日は校内で資料整理をお願いしてたはずなんですが……。 任務記録を見ると、調査任務に同行してますね」
「は?」
五条の声が、一瞬で冷たくなる。
「……力のこともあるから、の任務は僕の監督下って、言ってあるよね?」
「す、すみません! そのはずなんですが、どうやら何か手違いがあったのか……」
「……一緒に行った補助監督は誰?」
「記録には……“水原”と記載してあります。」
「……水原? だれ?」
「……い、いえ……私も聞き覚えが……」
伊地知の手が震えながらタブレットを操作する。
報告書に記載された水原の連絡先に何度もコールをかけるが、繋がらない。
「……電話、繋がりません……!」
その瞬間、五条の手が自分のスマホに伸びた。
迷いなく、の名前をタップする。
コール音が響く。
……1回。
……2回。
……3回。
(出ろ……)
……4回。
……応答なし。
「……チッ。伊地知、このままの任務先行って!」
「は、はいっ!!」
伊地知が緊張で眉を引き締め、再びハンドルを握った瞬間――
スマホが、震えた。
五条は即座に反応し、画面を確認する。
すぐさま通話ボタンを押す。
「――? 今どこ?」
だが、耳に届いたその声に――
五条の表情が、明らかに変わった。
無言でスマホを耳に当てたまま、車窓の闇を睨みつけている。
「――伊地知。急いで」
その張り詰めた声色に、伊地知が無言で頷く。
夜の車内、エンジンの唸りだけが闇を切り裂いていった。