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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第15章 「その悔いは花冠に変わる」


呪霊の異様に長い腕がぬるりと持ち上がる。
歪んだ指先がまっすぐ女の子へと伸びていた。

 

体が勝手に動いていた。
私は女の子に飛びついて、その体を押し倒すようにかばっていた。

 

「――っ、きゃぁ……っ!」

 

ずしゅっ。

 

鈍く重い音とともに、何かが私の肩にめり込んだ。

 

「――ッ……!!」

 

焼けるような痛みが、肩口から全身に走る。
思わず奥歯を噛み締めた。


(……肩、やられた――!)

 
吐き気すらこみあげるその激痛に、喉の奥が勝手に震えた。


 
「だ、だいじょうぶ!? お姉ちゃん、血……!」

 

下で見上げてくる女の子の瞳に、私は震えながらも笑ってみせた。

 

「だいじょうぶ……全然、平気……っ」

 

嘘だった。冷や汗が止まらない。
肩が熱い。


ずきずきと脈打つ痛みが、鼓動と一緒に全身に広がっていく。
でも、どのくらい血が出てるのかも、どれだけ深く刺さったのかもわからなかった。


でも――


(まだ……握れる)


左手に残る呪具の重み。
しっかりと小太刀は握れていた。
震える指に確かな感触があった。
 

(……なら、まだ戦える!)


腕を上げようとすると、意識が遠のきそうになる。
それでも、足を踏ん張ることはできた。
立ち上がれる。前に出られる。

 

「……隠れてて。絶対に、こっちに来ちゃダメ……っ」

 

女の子にそう囁いてから、一歩前へと進んだ。



「……来なさい」



声が震えないように、息と一緒に吐き出す。


その瞬間、呪霊が跳ねた。
波を蹴り水飛沫をあげながら、まっすぐこちらに。


私は両手で小太刀を構える。
眼鏡越しに、その軌道がはっきり視えた。


呪霊の触手が伸び、爪が鋭く振り下ろされる。
私はわずかに身を沈め、滑るように踏み込みながら小太刀を振るった。
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