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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第14章 「その花は、誰のために咲く」


「ほんとすみません! 助かりました!」



補助監督が立ち上がり、書類を整えながら頭を下げる。
そのまま立ち去ろうとした背中に、思わず声をかけていた。

 

「あ、あの……っ」

 

彼が立ち止まる。

 

「……白い犬、飼ってましたか?」

 

確信があったわけじゃない。
でも、訊かずにはいられなかった。
 

彼は、少し驚いたように目を瞬かせたあと、
ふっと表情をやわらげて笑った。

 

「……はい。秋田犬なんですけど――」

 

そう言いながら、彼はスマホをポケットから取り出す。
画面に表示されたのは、一匹の白い犬の写真。

 

まさに、さっき見えたあの映像の中の犬だった。
芝生の上で尻尾を振っている、あの、白い犬。

 

「……先日、亡くなったばかりなんです。
老衰なんで、仕方ないんですけど……物心ついた時からずっと一緒だったんで……胸にぽっかり、穴が空いたみたいで……」

 

彼の声は笑っていたけれど、少しだけ寂しそうだった。
その響きが、胸の奥にじわりと染みこんでくる。


ペットなんて飼ったこともないはずなのに。
それでも、この人のあたたかさの記憶と、
それを失った寂しさが、まるでわたしの中にも芽吹いてしまったかのようだった。


彼は手に持っていたスマホをポケットに戻すと、スーツの袖で目元をぬぐった。
無理に笑うように、少しだけ唇の端を上げる。



「……って、なんでわかったんですか?」



不意にそう尋ねられて、一瞬言葉に詰まった。

 

「っ、あ……いや……」
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