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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第1章 「邂逅 ― 目覚めの夜 ―」


背後で、コツン、と固い靴の音が止まった。



「ちょっと待って、そのまま。今、何を使ったのか、教えてくれる?」



振り返ると、白衣を羽織った女性が立っていた。



「……だれ、ですか?」

「家入硝子。まぁ、医者かな」



家入――そう名乗ったその人は、子どもを別のスーツの男の人に託して、私のほうへゆっくりと歩いてきた。



「ちょっと見せて。……庇った時、手、擦りむいてるでしょ」



言われて気づいた。
左の手のひらに、じんわりと赤い線。
……痛みは、なかった。


そっと差し出すと、その人の手がふれた瞬間――



「っ……」



熱が走った。
でも、それは一瞬で弾かれるように引いた。


眉をしかめる白衣の人。



「……私の反転術式が、拒絶された」



拒絶? 
……はんてんじゅつしきってなに?
わたしの体、なんか変なのかな?



「こういう不思議なこと、前にもあった?」



そう聞かれて、少しだけ記憶を探った。



「……はっきりは、覚えてないけど。小さい頃、火事のとき……私のまわりだけ、燃えてなかったって、言われたことがあります……」



あのとき、煙の中で光ってた“なにか”。
私を守るように浮かんでた、白い輪。


家入さんは黙ってわたしを見続けている。
その視線が、わたしの中の何かを探るようで落ち着かない。


(……どうして、私だけこんなことが起きるんだろう)


さっきまで熱かった手は、もう指の先まで冷たかった。


(……私って、なんなんだろう)
















──その夜。


制服を着たまま、机に突っ伏していた。
目を閉じていたつもりが、いつの間にか眠っていたらしい。


ふと顔を上げると、鏡に映った瞳が一瞬だけ、淡い翠に染まった気がした。



「……“悠蓮”(ゆうれん)って……誰?」



呟いた途端、呼吸が止まる。
胸が締めつけられるような、変な感じ。
頭の中で、誰かがその名前を呼んだような気がする。


それが夢なのか現実なのかもわからず、ただその響きだけがいつまでも離れなかった。
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