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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」


***


週末の朝、高専の正門前はいつもより人通りも少なく、
静かな空気が漂っていた。


石畳の上をかすかに風が通り抜け、木々の葉がさらさらと音を立てる。


は、門の前で立ち止まった。
ほんの少しだけ浮き足立つ気持ちを、胸の奥で抱きしめる。


“先生と泊まりで京都”
それは単なる任務以上の、特別な時間になる気がして。


(緊張しすぎて、ほとんど眠れなかった……)


持ってきた旅行バッグを見下ろして、ふぅと小さく息を吐く。


(……一応、新しい下着、入れてきたけど……)

(べ、別に、そういうことにならないかもしれないのに……)

(ていうか、私、何を期待してるの……!)


ひとりで心の中に突っ込みを入れていた


そのとき――



「お、時間通りだね」



背後から聞こえたその声に、胸が跳ねた。


慌てて振り向くと、
先生が、片手をポケットに突っ込みながら歩いてくるところだった。


黒のシャツに薄手のジャケット、少しダメージの入ったデニム。
カジュアルなはずのその服装も、彼が着ると洗練されて見えて、思わず目が奪われる。


そして、黒縁のサングラス――
その奥から、かすかに“蒼”が透けて見える。


普段の目隠しでは見られない、あの澄んだ蒼。
はっきりとは見えないけれど、薄いレンズ越しに覗くその光に、心臓が静かに跳ねた。


(……か、かっこ良すぎるよ)


思わず目が泳いでしまう。



「おはようございます、先生……」



なんとか声を出すと、
彼は少し顎を上げて、にっと笑った。



「うん、おはよ。――、今日も可愛いね」

「……っ、そ、そういうの、いきなり言わないでくださいっ」



咄嗟に言い返したけど、顔が熱くなっていくのを自覚してる。
それを見て、先生はさらに悪戯っぽく口角を上げた。



「ほんとだよ? 髪、いつもとちょっと違うでしょ」

「えっ……」



慌てて自分の髪を触る。
確かに、今日のために少しだけ巻いて、整えてきた。


(……気づいてたの?)

「気合い、入ってんねぇ」

「ち、ちがっ……べ、別にっ」



バレバレの否定を返すと、先生は楽しそうに笑った。
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