第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」
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はベッドにうつ伏せになったまま、枕をぎゅっと抱きしめる。
顔を横に向けても、すぐにまた押しつけてしまう。
(……京都、行くんだ)
何度心の中で繰り返しても、胸の奥のふわふわは収まらなかった。
“先生とふたりで京都へ”――
それだけでも、もう心臓が忙しいのに。
(調査……だよね。悠蓮のこと、ちゃんと調べに行くんだよね……)
必死に言い聞かせようとしても、思考の端っこでどうしても浮かんでしまう。
(……でも、“ふたりきり”で、泊まるなんて……)
ぽふん、と枕に顔を押しつける。
顔が熱い。鼓動もうるさい。
(……どうしよう、緊張で今から眠れなくなりそう……)
頭の中はとっくに収拾がつかなくなっていた。
(……もしかして、キスの先も……?)
(どうしよう……なにか、準備したほうが……いいのかな……)
(……何を……? わたし、なにも知らないのに……)
恥ずかしさと不安と、それでもどこかにある期待。
感情がぐるぐると渦を巻きながら、ますます眠気を遠ざけていく。
(……誰かに聞きたいけど……)
頭に浮かぶのは、野薔薇ちゃんや硝子さんの顔。
でも――とてもじゃないけど言えない。
(先生と、そういう関係なんて……)
両手で顔を覆って、布団に深く沈み込む。
……そして、しばらくしてから、意を決して充電していたスマホを手に取った。
画面の明かりが、夜の部屋にぽつんと灯る。
ブラウザを開き、「初エッチ 夜 準備」と打ち込んだところで――
ピロンッとLINEの通知が鳴った。
「……っ!?」
思わずスマホを放り投げそうになる。
画面に浮かんだのは――