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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」


私の答えに、先生は満足そうに目を細めた。



「そう言うと思ってた」

「じゃ――今週末、泊まりで行くから。
ちゃんと準備しといてね、」

「――っ!?」



思わず、言葉が詰まった。



「えっ? と、泊まり、ですか?」



頭の中が真っ白になる。
“京都”と聞いたときの動揺どころじゃない。
“泊まり”って――それって、つまり――


先生はそんな私の反応を楽しむように、肩をすくめた。



「だって京都まで行くんだよ?
日帰りなんて、もったいないじゃん」



さらっとそう言いながら、悪戯っぽく微笑む先生。



「……そ、そうですけど……っ」



うつむきかけた顔が、どうにも熱い。
胸の奥もざわざわして、視線のやり場に困る。


(に、任務の一環……任務の一環だから……っ)

(けど、泊まりって……)


「顔、真っ赤」



先生が目元を緩めて、にやりと口角を上げる。



「何を想像してたんだか?」

「っ……な、なんにも想像してませんよっ!」



声が裏返る。
慌てて否定したけれど、自分でも火が出そうなほど顔が熱かった。



「へぇ? じゃあ、そのほっぺの色は何?」

「そ、それは……あの、暑くて……!」

「ふーん。暑さのせい、ねぇ。今日涼しいけど」



先生はからかうように笑って、私の頭をくしゃりと撫でた。



「ま、いいよ。妄想するのは自由だからさ?」

「だから、してませんって!!」



即座に言い返したはずなのに、
先生の笑い声がやけに楽しそうに響いて、
なんだか負けたような気がして――

わたしは、思わず唇を噛んで俯いた。


(……でも……先生と一緒なら、きっと)

(……どんな真実でも、ちゃんと向き合える気がする)


頬の熱はまだ引かない。
けれど、その奥で確かに、ひとつの覚悟が芽を出していた。


わたしはそっと、視線を上げる。
――先生はもう、次の任務の話をしながら歩き出していて。
その背中が、頼もしくて、眩しくて。


わたしは、小さく深呼吸して、その背を追いかけた。


小さな決意を、胸に灯して。
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