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【呪術廻戦/五条悟R18】魔女は花冠を抱いて眠る

第11章 「魔女はまだ、花の名を知らない」



(な、なにそれ……そんなの……)


不意に先生の指が、
するりと私の指のあいだに絡んできた。


(っ……!)


指の節まで感じるほど、近くて、やわらかくて――



「……先生……」



名前を呼ぶのが、やっとだった。


(……何か言わなきゃ)


そう思った瞬間、


すっと、顔が近づいてくる。



「だ、誰か来たら……」



思わず小さく囁くと、先生はふっと笑った。



「大丈夫。誰も来ないよ」



低くて、優しくて――
耳の奥まで響く声。


そのまま、ゆっくりと唇が近づいてきて、
私は、自然と目を閉じていた。


(……先生……好き)


心臓が、喉までせり上がってくる。
息も、鼓動も、熱も、全部が先生に向かって高まって――


あと数センチ。
触れる、その直前。













「センセー! ー!!」



突然、遠くから誰かの声が響いた。



「……っ!!!」



先生と私は、同時にびくりと肩を震わせて、
慌てて、お互いからパッと身を引いた。


振り返ると、
遠くから、手をぶんぶん振りながら駆けてくる人影。



「……い、虎杖くん……!?」



先生が小さく嘆くように眉をしかめる。
私は慌てて姿勢を正して、まるで何もなかったようにベンチに座り直す。


(び、びっくりした……!)

(……い、今のって……見られて……ないよね!?)



「二人ともここにいた!五条先生、伊地知さんが探してたよー!」

「あー、サンキュー。悠仁」



先生は笑いながら軽く手を振る。
でも、さっきまでの空気とはまるで別人のように、
どこか“先生”の顔に戻っていた。


虎杖くんは、こっちを見てニカっと笑う。



「! 今から呪具庫の整理だって! 一緒に行こうぜ!」

「う、うんっ!」



私は慌てて立ち上がり、虎杖の後を追うように足を動かす。
顔の熱をなんとかごまかしながら、
まだ少し火照った手をぎゅっと握りしめた。


ふと気になって、ちらっと後ろを振り返る。
先生はまだベンチにいて、
小さく、片手をひらひらと振っていた。


私も、恥ずかしさを紛らわせるように、
ほんの少しだけ手を振り返す。


――そして、まだ手の熱を残したまま、早足でその場を後にした。
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