第10章 「花は焔に、焔は星に」
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同じ星空の下――
誰もいない高台に、ひとりの男が佇んでいた。
その姿は闇に溶け、輪郭すら曖昧だ。
ただ、月光がわずかに髪を照らす。
夜風が吹き抜ける。
彼の前髪を、静かに揺らしていった。
「悠蓮……やはり、お前は綺麗だね」
「千年経っても、変わらない。……けれど」
「今の“それ”も――悪くない」
男の瞳が、ゆっくりと細められる。
星の光を反射して、淡く、狂気に似た光が宿る。
「……待ってて。もうすぐ、迎えに行くよ」
「今度こそ、“あの日”の続きを――」
その囁きは、夜の帳に溶け、風に攫われて消えた
そして、男はふと微笑んだ。
――それは、痛みか、歓喜か、それとも狂気か。
──第一部、了。